クールな許嫁の甘い独り占め。
これで一件落着か。
ひとまずよかった。このまま天野を送ろうとしたが、そこまで迷惑をかけられないと断られた。
「本当にありがとう。また改めてお礼させてね」
「ううん、気をつけて帰ってね!」
まだ涙が滲んでいたが、表情は晴れやかだった。いつもの明るい天野の笑顔だ。
さて、天野を無事に見送ったけれど。
「――咲玖!なんで来たんだ!」
「だって、心配だったんだもん…っ」
「咲玖まで危ない目に遭うかもしれなかったのに」
「蒼永がいれば大丈夫でしょ!?」
「それはまあ…」
何があっても守るけど、それでも危ないところにわざわざ来て欲しくはない。
「とにかく咲玖、もうこんなことは…えっ!?」
「……っ、うっ…」
泣いてる!?
「ごめん、強く言いすぎた」
「ちがうの……」
「違う?」
「ほんとは私、蒼永に行ってほしくなかったの…」
え…――
「ずっとヤキモチ妬いてたの…紫帆ちゃんのこと心配しながら、本当はヤキモチ妬いてた…。
だって、蒼永は私の許嫁なのに…」
「咲玖…」
「蒼永が他の女の子を心配するのが、やだったの…っ」
ボロボロ泣く咲玖のことを、気づいたら抱きしめていた。
「好きだよ」
「蒼永…」
「俺が好きなのは咲玖だけだから…」
「…っ、私も……」