クールな許嫁の甘い独り占め。
さっきよりもやる気が湧いたのを感じながら、自分の席へ戻ろうとしたら、声をかけられた。
「蒼永!」
「えっ…母さん…」
「よかった!間に合ったわ!」
走ってきたのか、少し汗をかいている母さんとその少し後ろに父さんもいる。
「ごめんなさいね、遅くなって」
「いや全然いいんだけど、来れたんだ」
ここのところ家がバタバタしていたから、体育祭も行けるかわからないということだったし、無理して来なくても良かったのに。
「蒼永のリレーだけでも見たかったの。ねっ、パパ」
「あ、ああ…」
父さんは気まずそうにして俺と目を合わせようとしない。
「蒼永の出番、まだなんだろう?それまで木陰で休んでるよ」
「ちょっとパパ!」
「すまない、少し疲れているんだ」
そう言って父さんは申し訳なさそうに背を向けた。
「ごめんなさいね。なんとか連れてきたはいいんだけど…」
「ううん…」
俺はずっと父さんに避けられている。
仲が悪いわけではないけど、多分父さんはずっと俺に対して負い目を感じている。
理由は、跡取りとしての役目をすべて俺に任せることになったから。