心霊現象 研究同好会
でも、穂乃果ちゃんはすっごく幸せそうだ。
普段は常に冷静で落ち着いた雰囲気の龍泉寺くんも、今は感情を上手く制御出来ないみたいでソワソワしてる。
なんだか二人とも可愛いな。 と思いながら、ふふっと笑う。
と、その時。
二人の間に立った如月くんが、龍泉寺くんの頭を勢いよくバシッと叩いた。
「おいコラ透っ、公私混同して腑抜けた顔してんじゃねぇぞっ?」
「……裕翔、痛いよ」
「ってニヤニヤしながら言うなっつーの。 まったくもう…ほらほら、炊事場に行こうぜー」
龍泉寺くんの背中を軽く押したあと、他のメンバーのことは目で促す。
それに従い、全員が炊事場へと歩き始めた。
先頭は龍泉寺くんと穂乃果ちゃん。
相変わらず二人の横は人一人分の距離が開いているけど、でも今はお互いに目を合わせながら何かを会話している。
その少し後ろに倉本くんと沙綾ちゃんが居て、こちらも二人で何か話し中だ。
私と如月くんは、四人からはもう少しだけ距離を開けながら……ゆっくりと歩みを進めていた。
「少しは落ち着いた?」
「ん……もう大丈夫。 と自分に言い聞かせながら、「いつも通り」を目指して頑張ります」
「と言ってる顔が既に硬いけど、まぁでも、 俺もフォローするからさ。 あんまり一人で頑張りすぎないようにな」
「……ありがとう」
「うん」
優しい顔に、私もなんとか笑みを返す。
……一生懸命、「いつも通り」に。
周りに心配をかけないように。
そして自分自身が、強く居られるように。
私を突き放すような桜井先輩の声は、耳からずっと離れなかったけど……それでも今は、前に進んでいくしかない。
一緒に居るみんなとの時間を、大切にするために……。