心霊現象 研究同好会
先輩の思いを、先輩の言葉で。
こういうのは当事者同士で話すしかないから、俺は事の成り行きを静かに見守るだけだ。
「ということで、俺は今からスーパーに行ってメシ買ってきますんで。その間に芽衣子さんにちゃんとメッセージ送っといてくださいね。 じゃ、行ってきます」
「……ん。 気をつけてな」
「はい」
短いやり取りをし、財布とスマホだけを持って家を出る。
外に出たあと……歩き出す前にスマホに視線を落とした。
まずは、樫村先輩に連絡しよう。
本当は電話の方が話しやすいけど、外での会話は辺りに響きやすい。
そんな状態で「幽霊」とか「取り憑く」なんてってことを うっかり言ってしまったら大変だから、メッセージを送ることにした。
【 桜井先輩を無事保護しました 】
【 連絡がつかなかった間に色々あったみたいで、今はヘコみモード中です 】
【 芽衣子さんと倉本にはこっちで起きた事は伏せておいてください 】
【 あとで電話しますので、詳しくは後ほど 】
……という感じでいいかな。
あとのことは家に戻ってからやろう。
「……なんだか、大変なことになったな……」
とポツリと言いながら歩き出す。
そして歩きながら考えるのは、倉本からのメッセージに書かれえていた「女性の幽霊」のことだ。
去年 俺が合宿した時は、他者に取り憑こうとする幽霊は居なかった。
なのに、今年は居る。
通りすがりの幽霊?
それとも宿泊施設に住み着き始めた?
もしくは、ウォークラリー中に なんらかのことがあり、その男子生徒について来てしまったのだろうか?
と色々聞きたいことはあるけれど、合宿中はスマホの使用が制限されているから…続報が届くのを待つしかない。
今はただ、一年生たち全員に何事もないことを祈る。
そして桜井先輩と芽衣子さんの間に出来てしまった溝が少しでも早く埋まるようにと願いながら、また静かに息を吐き出した。