心霊現象 研究同好会
その彼女曰く、「何があったのか覚えていない」らしい。
彼女は最初の方に出発した班の一人で、ゴール地点であるプレイホールに到着したところまでは覚えていて、その後のことは「わからない」とのことだった。
……怪奇現象っていうのはこうやって出来上がっていくんだろうな、と静かに思う。
誰にも説明出来ない、不可思議な事態。
自分の理解の及ばない部分の出来事というのは、いつどんな時でも恐ろしい。
だからその場に居合わせた生徒たちはみんな口を噤み、不安そうな顔をする。
それを宥めて取り繕うとする先生たちもまた、その表情には不安が見え隠れしていた。
そんな中で、普段と変わらない様子で声をかけてきたのは、智樹さんだった。
「さぁみんな、とりあえず移動しよう。 建物に戻ってまずは風呂な。 記憶が曖昧だって言ってた女の子は、風呂で体を綺麗にしたあと念のため病院へ。 で大丈夫ですかね、志村先生?」
「え? あ、そ、そうですね。 お風呂場には私が付き添いますので、しっかりと様子を見ておきます。 その間に他の先生方には親御さんへの連絡と、車の手配などをしていただければ……と思います」
「オーケー、その通りにやっていきましょう。 と言っても、俺はここの状況を確認してから戻りますので、あとは任せます」
「えっ…お一人で残るつもりですかっ……!? それはさすがに危険ではっ……!!」
「あ、じゃあクボセンをこっちにください。 それなら問題はないですよね?」
養護担当の志村先生にそう言ったあと、智樹さんがニッコリと笑う。