心霊現象 研究同好会
「俺さ、人間関係をリセットしたくてこっちに引っ越してきたんだ」
神代先輩が、遠くの方を見ながら ふっと笑う。
「こういう体質のせいで、気味悪がられることが多くて。 だから高校は全然知らない奴ばっかりのところに行って、誰にも何も言わずに普通に生きてくぞーって思ってたんだ」
「あ……それって私も同じです。 だから私も、知り合いが居ない こっちに来たんです」
「そっか。 「隣の県に居る孫と住むことになった」とは聞いてたけど、そういう事情だったんだね。 そういえば、家族はみんな諏訪さんの体質のことは知ってるの?」
「はい、知ってます。 知ってるからこそ、同好会に入るのは反対されそうなんですよね……」
「なるほど」
口元に手をやり、何かを考え始めた先輩は……少しの沈黙のあとに私を見た。
「今から家にお邪魔してもいい? ていうか、勝手に上がっちゃうね」
「……えっ?」
「この時間なら恵美子さん居るでしょ? だから同好会のことは俺が話すよ。 その方が承諾してもらう確率は高くなると思うから。 ということで、行こう」
「わっ…ちょ、先輩っ……!?」
神代先輩が、私の手を掴む。
そして、先輩に引っ張られる状態で歩き出し……あっという間に家に到着した。
なんの躊躇いもなく玄関のドアを開き、
「恵美子さん、居ますかー? 郁也ですけどー」
と言いながら、ズカズカと上がり込んでいく。
それに対し、家の奥から「はーい」と言うおばあちゃんの声が聞こえてきた。
手は既に離されていたけれど、戸惑う私は動き出しが一歩…いや三歩くらい遅れてしまった。
ので、先輩が廊下を進んでリビングに続くドアを開けた時に、私はようやく靴を脱ぎ終えて廊下を進み始めた。
「神代先輩っ……!!」
やっと私もリビングに入る。
……おばあちゃんはソファーに座りながらまったりとテレビを見ていて、神代先輩はその横にちょうど腰かけたところだった。