心霊現象 研究同好会
──そのあとは、大きなトラブルもなく予定通りに進んで行った。
部屋を速やかに片付けて、荷物を持って駐車場に集合し、施設の皆さんに挨拶を済ませ、バスに乗る。
……本当はどこかで智樹さんと話したかったけど、今日は一度も見かけなかった。
もしかして、遺体の第一発見者だから警察で事情を聞かれてるのかな?
まったく見かけてないってことは、施設に居ない可能性が高いのかも……。
「智樹さん居なかったね。 どうしたんだろ?」
と、バスで隣の席になった沙綾ちゃんが首を傾げる。
まだ遺体が見つかったことは秘密の話だから……「色々喋りたかったのに残念だよね」とだけ返すことにした。
クラスのみんなが居るところで幽霊の話は出来ないから、その後はごくごく普通にお喋りを楽しんだ。
隣の席同士でモジモジしてる穂乃果ちゃん龍泉寺くんカップルを見てニヤニヤしたり、ヒーロー認定されて いまだに質問攻めに遭ってる倉本くんを見て同情したり、悪びれる様子もなく楽しそうに笑う如月くんを見て呆れたり。
龍泉寺くんが幽霊に取り憑かれそうになったこととか、夜の散策でのトラブルとか、色々あったけど……それでもやっぱり楽しい合宿だった。
……遺体が見つかったということが発表になれば、こうやってみんなで無邪気に笑う時間は持てなくなると思う。
ショックを受けて、辛い思いをする人も出てくるだろうし……合宿の話を口に出すことすらタブーになってしまうかもしれない。
だから今は…今だけは、みんなと一緒に楽しく笑おう。
友達と過ごす時間がこんなにも楽しいものなんだ、って、初めて知った行事だったから。
たとえ今回の合宿がタブー視されることになっても、それでも私にとっては良い思い出の一つだ。
「あ、芽衣子。 すっかり言うのを忘れてたんだけどー」
と、沙綾ちゃんがニコッと笑う。
「私と穂乃果、心霊現象 研究同好会に入るからよろしくね?」
「……えっ!?」