心霊現象 研究同好会
あの時、先輩は自分の色については言及しなかった。
智樹さん曰く「特別」だという透明のオーラ。
それを言われた先輩は、どう感じただろう?
「……あの時は、「別のところから“何か”を持ってくれば見えるようになるのかな」って思ってたよ」
「え?」
「んーと、例えばなんだけど」
そう言いながら体を起こした桜井先輩は、そばに置いてたカバンの中をゴソゴソと漁り始めた。
そこから小さなメモ帳と筆箱を取り、私のそばに来る。
「オーラは感情云々で色が変わる、って言ってただろ? で、もちろん俺には感情があるし、それを爆発させることもある。 つまり透明でもそこに「ある」んだよ」
「……はい」
「あるのに見えない。 見えない理由は何か? と聞かれても わからないけど、もしも俺自身の色が見えないのなら他から“何か”を持ってくれば見えるようになるんじゃないか? って思ったんだ」
「……」
「オーラは普通では見えないモノだから、つまり……」
「……先輩の体に“何か”が入れば、透明は透明じゃなくなる……?」
「かもしれないね」
先輩がメモ帳に描いたのは、透明の四角い枠で囲われた棒人間。
そしてその横には……黒で塗りつぶされた四角い枠で囲われた、シーツを被ったようなおばけの絵。
お互いにハッキリとは言わないけれど、なんのことを言っているのかは明白だ。
先輩の体に幽霊が取り憑けば、智樹さんにはソレがオーラとして見えるようになるのかもしれない。
……だけどそれは幽霊の色だ。
先輩の色じゃない。
「……そんなに深刻そうな顔しなくて大丈夫だよ」
テーブルにペンを置いた桜井先輩が、ふっと笑う。