心霊現象 研究同好会
「……なんで、離してくれなかったんですか……」
「同性の紗良先輩ならともかく、神代や智樹先輩には泣き顔を見られたくないんじゃないかなーって思って。 俺は下に行ってるから、しばらくここで休んでて。 ケーキはそのあとで食べよう」
ポンポン、と優しく頭を叩かれる。
そのあと先輩はメモ帳をパタンと閉じ、それをカバンへと戻した。
「メモ帳に書いたことの話は、俺と諏訪ちゃんだけの秘密な?」
「あ……はい……」
「よし、じゃあまたあとで」
ひらひらと手を振り、桜井先輩は部屋を出ていった。
その一分後くらいに、慌てた様子の紗良さんが入ってきた。
その手には濡れタオルと保冷剤がある。
「わぁ…随分泣いちゃったみたいね、すぐ冷やしましょ」
「……すみません」
「いいのよ、それにどうせ健吾くんが悪いんでしょう? まったくもうっ、憧れのジェイド様のイメージが崩れちゃったわ。 ……どっちかと言えば郁也くんの方がジェイド様のイメージに合うのよねぇ。 知的な雰囲気で、とても穏やかで……うん、そうね、これからは郁也くんのことをジェイド様って思って過ごそうかしら。 サイトを作ったのは健吾くん、その中身は郁也くん。 うんっ、これがいいわっ」
コロコロと表情が変わる紗良さんを見ながら、ふふっと笑う。
年上のお姉さんなのに、なんだか可愛いなぁ。
「もうっ、芽衣子ちゃん笑わないでよっ」
「ごめんなさい。 でも、なんだかとっても…面白くて……」
「……ふふっ、まぁ元気が出てきたならよかったわ。 さ、目を閉じて」
促されるままに、目を閉じる。
保冷剤を間に入れた濡れタオルが、熱くなっていた瞼を冷やしていく。
キンキンに冷えてて、気持ちいい。