心霊現象 研究同好会


「それで? 何があったの? 健吾くんに何か酷いことを言われたの?」

「……違うんです。 私、先輩と喋ってるうちに昨日のことを思い出して……。 本当に馬鹿なことをしちゃったな、って、凄く後悔して……」

「あぁそれって、幽霊を自分に引きつけようとした…って話? 智樹に聞いたけど、確かにそれは良くないことだったと思う。 友達を助けようとしたのは勇敢なことだけど、それで自分の身が滅んだら意味がないもの」


「……はい」

「……私ね、智樹が無茶をしないか いつも心配なの。 あの人は「大丈夫」って笑うけど、でも死んじゃったらもう二度と会えないでしょう? 智樹が居ない世界で生きていくなんて私には耐えられない。 たとえ私を助けるために無茶をしたんだとしても、私は私のために無茶なんかして欲しくない。 私のことを想うのなら自分を生かすことだけ考えて。 って、そう思うのよ」



凛とした声が部屋に響く。

紗良さんの思いは、とても真っ直ぐだ。



「私は智樹が生きていればいいの。 その結果 私の命が散ることになっても、智樹さえ生きていればそれは本望だわ」

「紗良さん……」

「って智樹に伝えたことがあるんだけど、「俺も全く同じ気持ちだよ」って笑われちゃった。 ふふっ、おかしいでしょう? 二人とも同じ考えだったの。 大好きな相手を助けるためになら、自分の命は全然惜しくないのよ」


「……え……?」



そっと静かにタオルを外して、紗良さんを見る。

紗良さんはとても優しく笑っていて、私の髪をそっと撫でた。


< 209 / 283 >

この作品をシェア

pagetop