心霊現象 研究同好会


「私が言いたいのは、実は凄く簡単なことでね? 「自分の命が惜しいと思う時なら賭けるべきじゃない」ってことなの。 もし何かあった時は「自分の命を賭けるほどの相手か?」と自問する時間を持つといいと思う。 冷たい言い方に聞こえるかもしれないけど、一人の人間が救える命なんてたかが知れてるのよ。 全部を救おうだなんて到底 無理な話だわ」

「……」

「だったら何を優先するか? それはもちろん自分の命だし、「命を賭けてもいいと思う相手」のことだと思う。 それ以外の人のことは、命を救う仕事を選んだ人たちに任せておけばいいのよ」



笑顔でそう言った紗良さんは、そのあとに少し目線を下げた。



「……まぁ、こんな風に言ってる私でも、自問する時間すら無かったら咄嗟に動いてしまうかもしれないけどね。 考えるよりも先に体が動くっていうのはよくあることだから。 人間って面倒よね、理性的でありたいのに感情的に動いてしまうんだもの。 そのせいで失態ばかり……」

「……桜井先輩に身を捧げようとしたり?」

「そうっ、あれは本当にその通りっ。 今 考えたらなんであんなこと言ったの!?って思うのに、気持ちが抑えられなくて……。 あぁでももう大丈夫っ、私は健吾くんじゃなくて郁也くんのことをジェイド様だって思うことに決めたからっ。 だからあんな失態はもう繰り返さないっ。 智樹に嫌われるようなことももう絶対にしないわっ」



明るく笑う紗良さんを見てると、私も自然と笑ってしまう。

……やっぱり紗良さんはとても素敵な人だな。

ちょっと暴走しちゃうことはあるけど、それでも芯は真っ直ぐで、強くて。

まぁ、智樹さんのことを話す時はフニャフニャになっちゃうけどね。


< 210 / 283 >

この作品をシェア

pagetop