心霊現象 研究同好会


物はほとんど何も置いていないから、作業に集中しやすい。

……と思って二階に来たんだけど、ここに来たのは失敗だったかもしれない。



「……」



そっと静かに窓に近づき、カーテンの隙間から外を見る。

……実はこの部屋から、諏訪ちゃんの家が見えるんだよな……。


もちろん向こうの家もカーテンが閉まっているから、中の様子を窺うことは出来ない。

ていうか窺うな俺。

ストーカーじゃないんだから覗き見はやめろ。


と自分に言い聞かせながらカーテンを閉め、テーブルのところへと移動する。

そのままイスに腰を下ろし、足を組む。



「……諏訪ちゃんと二人でどこかに……って、どこに行けばいいんだろう」



……行きたい心霊スポットなら、すぐに何個も思いつくんだけどなぁ……。


んんー……遊びに行く場所の定番と言えば、水族館や遊園地、動物園とか?

もっと身近なところだと、映画やカラオケ、ゲーセンで遊ぶ、街歩き…などなど。

思いつくはつく、けど……どこが最適なのかまったくわからない。



「……諏訪ちゃんは、どういう場所が好きかな」



せっかくなら、一緒に楽しく過ごせる場所がいい。

でも俺はまだ諏訪ちゃんのことをあまりよく知らない。

今はただ、「好き」って気持ちだけが先行してる状態だ。



「……うん。 まずは、もっと諏訪ちゃんのことを知っていこう。」



今すぐにでもお誘いをしたいところだけど、誘うならもっとちゃんと諏訪ちゃんを知ってからにしよう。

誘うのはそれからだ。

……その間に掻っ攫われませんように……。



「……っし。 とりあえず今は、作業に集中だな」



智樹先輩に聞いた話を忘れてしまわないうちに。

今、自分に出来ることをただひたすらにするために。



「頑張れ、俺」



そう言ったあと、作業に取りかかる。

この先の数時間、俺は“ジェイド”として過ごしていく。


諏訪ちゃんのことを考えるのは、作業が全部終わったあとだ。





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