心霊現象 研究同好会


だからそれを見た瞬間に思ったんだ、「あぁコレは智樹さんのことじゃないな」って。

だってジェイドはどっかのダンディーなおじさんだって思ってたから。

その友人ならSさんもジェイドと同じくらいの年齢だろ。 って。


よかった。 別人の話だ。

ジェイドが「色」の話をしたのは偶然だったんだ。

これはどこか遠いところに住んでる人の話なんだ。 と思って、軽い気持ちで読み進めた。


まぁ実際は ここに居る桜井先輩がジェイドで、Sさんは間違いなく智樹さんだったわけだけど……。



「……先輩たちって、凄いっすね」



いつも書いているのは神代先輩で、「色」の話を書いたのは桜井先輩。

なのに「ジェイド」は間違いなく「ジェイド」だった。

普通なら、言い回しの癖とか、句読点の打ち方とか、どこかしらで違いが出てきそうなものなのに。


架空の人物を二人で共有し、尚且つ違和感なく使っていくなんて凄すぎる。



「……俺は俺がやりたいように書いてるだけだから、凄いのはキッチリ合わせてくれる神代の方だよ」



と、桜井先輩が笑う。

それを受け、神代先輩に視線を向けるけど……とくに表情は変わらない。



「俺はただ普通に仕事をこなしてるだけですよ」



……と、すげぇクールな返答だ。

神代先輩が言う「普通」は、俺が思ってる普通とは違うんだろうなぁ……。

なんて思ってた時に、蒼葉が「先輩っ」と言いながらこっちを見た。


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