心霊現象 研究同好会


煽りに煽りまくった状態で、真っ直ぐに桜井先輩を見る。



「先輩が動かなくても、俺は動きますからね?」

「……」

「つーことで、はい、俺からの話は終わりですっ。 さっさと買い物を済ませちゃいましょ」



と声をかけても、桜井先輩はずっと黙ったままだ。

……ヤバいな。

相手は二個上の先輩なのに、色々と言いすぎたかもしれない。


心臓がバクバクして、冷や汗が流れる。

煽りすぎた…か?



「如月」

「……っ……」



突然呼びかけられて、体がビクッと反応する。

桜井先輩は……俺と視線を合わせることなく、僅かに下を向いていた。



「……な、なんですか?」

「ごめん、俺 帰るわ」

「は? 帰る…って……」


「自分の家に。 ほんとごめん、あとのことは任せるよ」

「いやいやいやっ、急に帰るとかありえないでしょっ……!!」



スーパーとは逆方向に歩き出した先輩の手首を掴んで、その動きを止める。

……けど、そこで気づいた。

掴んだ部分が、異様に熱いんだが……?

というか、よくよく見れば顔も少し赤い気がするし…呼吸もどことなく苦しそうだ。



「……先輩?大丈夫、ですか……?」

「大丈夫…だと思ってたんだけど、ちょっと……うん、ごめん。 如月は買い物をして、みんなのところに……」

「いやいや、こんな状態で放っておけるわけがないでしょ。 家、どこですか?」


「……向こう。 二分くらい行った先の…青い屋根の……」

「わかりました、あとは黙ってて大丈夫です」



意識は…ある。

でも目をギュッと閉じたまま、辛そうな顔だ。

……具合が悪いなら悪いって、なんで言わないんだよ。


これはきっと、周りをよく観察してる神代先輩でも想定外だと思う。

いや、あの人なら実は気づいてたかも……?

よくはわからない。

わからないけど、今は俺しか居ないから……俺一人でなんとかしなきゃ。


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