心霊現象 研究同好会
「諏訪ちゃんは…裕翔くんみたいな子と居た方が……やっぱり幸せかな……」
「……」
「……でもそれは…………嫌だなぁ…………」
先輩の瞼が、ゆっくりと閉じていく。
そしてそのまま、また眠ってしまった。
「……嫌なら、動くしかないですよ」
と伝えるけど、眠ってしまった先輩には聞こえていない。
聞こえていないとわかっていながらも、更に言葉を重ねる。
「先輩は自分が余るって思ってるけど、同好会の中でカップルが増えていくのなら、余るのはきっと俺です。 俺は「それでいい」って思ってる側の人間なので」
今までもそう。
俺は、周りの人間の引き立て役だから。
小学生の時くらいからずっとそんなキャラだし、今も…蒼葉の引き立て役な感じだ。
もちろん蒼葉にそういうつもりはないだろうけど、周りはいつでもそう見てる。
俺は蒼葉の引き立て役で、多分これからは桜井先輩の引き立て役にもなると思う。
そして俺自身「それでいい」と思ってる。
だから、これから先もこれでいい。
「……煽ってごめんなさい。 本当は俺、先輩のこと応援してますよ」
スースーと寝息を立てる先輩を見ながら、ふっと笑う。
その無防備な顔をパシャリと写真に収めたあと、画像を添付したメッセージを諏訪に送る。
【 寝言で諏訪のことを呼んでたよ 】と、うっすら偽造して。
まぁ、寝ぼけまなこで諏訪の名前を呼んだのは本当のことだし、まどろみの中で諏訪のことを考えてたのも本当のことだから、このくらいの嘘はいいだろ。
……このメッセージを読んだあと、諏訪はどう思うかな。
先輩のことを意識するようになるのか、それとも「良い先輩」のまま?
どっちだろう。
「……先輩が可哀想なことにならなきゃいいけど」
と苦笑いを浮かべ、寝てる先輩のそばに腰を下ろす。
「蒼葉ほどじゃないけど、俺も“ジェイド”のファンなので。 だから先輩が幸せになってくれることを、こっそり祈っておきますね」
そう伝えたあとは、ただ静かに……ゆっくりと息を吐き出した。