心霊現象 研究同好会
一学年上の先輩なのに、なんだか今は小さな子供みたいだ。
というか、子供っぽいのはわりといつものことか。
いつも明るくて、楽しくて、動作一つ一つから目が離せない。
そういう先輩の全部が全部、どうしようもないほどに愛おしい。
あぁ、困ったな。
気持ちが、抑えられそうにない。
……いつだったか、樫村先輩のことについて芽衣子さんと話したっけ。
その時に俺は「真っ直ぐに見つめられると絆されそうになる」と言ったけど、でも本当は違う。
俺は最初からずっと、樫村先輩に好意を抱いている。
だけどそれを悟られないように動いてるし、先輩に告白されても断った。
俺は……俺の力は、明るく笑う先輩の枷になると思ったから。
俺のせいで いつかはその笑顔が失われてしまうかもしれない。
天真爛漫な先輩を、俺は暗い谷底に落としてしまうのではないか……という恐怖がいつでも付いて回っている。
先輩は「気にしないよ」と笑って、今でもずっと俺を好いてくれているけれど……それでもこれ以上は近づけない。
近づいちゃダメだ。
……と、そう思ってたんだけどな。
「ねぇ、梨乃先輩」
いつもは苗字で呼ぶけれど、今は名前で呼ぶ。
少し緊張しながら。
でも、真っ直ぐに見つめながら。
そんな俺の様子に先輩はすぐに気づいたし、名前を呼ばれたことに対しても凄く驚いた顔をした。
だけどそのあとは……いつもみたいに明るく笑う。
「なぁに? 郁也くん」
と、まるでお返しだと言ってるかのように、先輩も俺を名前で呼ぶ。
満面の笑みで。
いたずらを仕掛けた、小さな子供のように。
……そういう仕草が、たまらなく可愛いんだよな。
と口に出して言ってしまいそうになるのをなんとか堪えながらも、視線は逸らさない。