心霊現象 研究同好会


一学年上の先輩なのに、なんだか今は小さな子供みたいだ。

というか、子供っぽいのはわりといつものことか。


いつも明るくて、楽しくて、動作一つ一つから目が離せない。

そういう先輩の全部が全部、どうしようもないほどに愛おしい。


あぁ、困ったな。

気持ちが、抑えられそうにない。


……いつだったか、樫村先輩のことについて芽衣子さんと話したっけ。

その時に俺は「真っ直ぐに見つめられると絆されそうになる」と言ったけど、でも本当は違う。

俺は最初からずっと、樫村先輩に好意を抱いている。


だけどそれを悟られないように動いてるし、先輩に告白されても断った。

俺は……俺の力は、明るく笑う先輩の枷になると思ったから。


俺のせいで いつかはその笑顔が失われてしまうかもしれない。

天真爛漫な先輩を、俺は暗い谷底に落としてしまうのではないか……という恐怖がいつでも付いて回っている。

先輩は「気にしないよ」と笑って、今でもずっと俺を好いてくれているけれど……それでもこれ以上は近づけない。

近づいちゃダメだ。


……と、そう思ってたんだけどな。



「ねぇ、梨乃先輩(・・・・)



いつもは苗字で呼ぶけれど、今は名前で呼ぶ。

少し緊張しながら。

でも、真っ直ぐに見つめながら。



そんな俺の様子に先輩はすぐに気づいたし、名前を呼ばれたことに対しても凄く驚いた顔をした。

だけどそのあとは……いつもみたいに明るく笑う。



「なぁに? 郁也くん(・・・・)



と、まるでお返しだと言ってるかのように、先輩も俺を名前で呼ぶ。

満面の笑みで。

いたずらを仕掛けた、小さな子供のように。


……そういう仕草が、たまらなく可愛いんだよな。

と口に出して言ってしまいそうになるのをなんとか堪えながらも、視線は逸らさない。


< 243 / 283 >

この作品をシェア

pagetop