心霊現象 研究同好会


「あーえっと、桜井先輩。 これ家の鍵。 神代先輩が渡してくれ、って」

「あ、サンキュー。 帰る時は玄関の鍵 開けっ放しでもよかったのに、ちゃんと閉めてってくれたんだな」

「まぁ、何があるかわかんない世の中なので。 実行したのは神代先輩なので、あとで連絡しといてください」


「うん」



……という返事のあと、また会話が止まる。


普段の桜井先輩と諏訪の様子は知らないけど、多分 今よりはもっと喋るよな……。

その二人が無言なのに、俺ばっかり喋るのはさすがに不自然だし。

かと言って、無言の時間が続くのもキツい。


さて、どうするべきか……。

と考えていた時に、ふと桜井先輩と目が合う。

先輩は俺に微笑んだあと、諏訪に視線を移し……俺に笑いかけたよりも更に優しい顔をした。



「諏訪ちゃん。 今日のお詫びに、今度 何かご馳走したいんだけどどうかな?」

「……え……?」

「体調のせいで心配をかけた、っていうのもあるけど、朝の俺の態度…あんまりよくなかったよなぁって反省してて。 そのお詫びがしたいんだ」


「そんな……私は全然、気にしてないのでっ……」

「諏訪ちゃんが気にしなくても俺が気にする。 ワガママでごめんだけど、ちゃんと目に見える形で償いがしたいんだ」

「……」



真っ直ぐな先輩の言葉に、諏訪は戸惑っている。

目が泳ぎ、助けを求めるように俺を見たけれど……ごめんな諏訪。 俺、ここは桜井先輩の肩を持つよ。

だって、桜井先輩はちゃんと本気の目だから。


嘘や冗談で諏訪を誘ってるわけじゃなくて、ちゃんと真っ直ぐに思いを伝えているから。

だったらもう、先輩を応援するしかない。



「いいじゃん、どっか連れてってもらえよ」



そう言って、諏訪に笑いかける。

そのあとに桜井先輩へと視線を向けた。


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