心霊現象 研究同好会
「あのっ……今日って、どこに?」
「ayaっていう名前の洋食屋さん。 そこはウチの親の友人夫妻がやってて、小さい頃からたまに食べに行くんだけど全部すげー美味いんだ。 だから諏訪ちゃんに俺の好きな味を知ってもらいたいなぁって思ったんだよ。 もちろん、オムライスも絶品だから期待しといてっ」
「わぁ…そうなんですねっ」
「ほんとは他の店も色々考えてたんだけどさぁ、うっかりハズレを引いたらヤバいなー…って思って。 その点、ayaなら絶対大丈夫。 って知ってるから、超絶 馴染みの店になりました。 その代わりにオーナー夫妻に茶々入れられるかもなので、そうなったらマジごめんなさい」
「ふふっ…先輩がオススメするお店、凄く楽しみです」
いつもよりも大人っぽい格好なのに、中身はいつもの先輩のままで。
変に飾らずに、いつも通りの姿で私に接してくれていることが何よりも嬉しい。
だから私の緊張は少しずつ緩んでいって、それと同時に自然と頬も緩んでいった。
──その後 私たちは、ゆっくりとお喋りをしながらお店に向かって歩みを進めていく。
心霊系の話はせずに、今から行くお店の話をたくさん聞いた。
オーナーは超有名なホテルの元シェフさんだという話や、お店の名前ayaがオーナーの奥さんの名前だという話、それからオススメのメニューやこだわりの食材の話などなど。
まるで、大事な家族を紹介するかのような…どこか誇らしげに話す桜井先輩を見て、自然と笑みがこぼれる。
ayaというお店は、先輩にとって本当に大切な場所なんだろうな。
その場所を私に教えてくれたことが嬉しいし、こうやって二人でゆっくり会話出来る時間が、とても幸せだ。
そしてその幸せをジーンと噛み締めている時に、目的のお店へと到着した。
日曜日のお昼時だから凄く混雑していたけれど、なんとかすぐに座ることが出来た。
お店はレトロでシックな雰囲気で、ゆったりとしたジャズが流れていて…とても心地いい。