心霊現象 研究同好会


相変わらず先輩の家には誰も居ないみたいで、シーンとしている。



「俺の部屋に行こう」

「はい」



促されるままに廊下を進み、先輩の部屋に入る。

前と変わらずに、部屋の中はスッキリとした状態だ。

その部屋に入ってすぐ、パタン…とドアが閉められた。


先輩はベッドに腰かけ、隣に来るようにとポンポンと布団を叩く。

一気に緊張が増すけれど、そのまま……隣に座った。



「さて、じゃあ話をしようか」

「……はい」



先輩の顔を見ることが出来ない。

私は視線を下に落としたまま、両手をギュッと握りしめる。

怖い。

怖い。

怖い……。






「俺ね、諏訪ちゃんが好きなんだ」



……え?

す、き……?



「最初に声をかけた時から、なんとなく気になってて。 一緒に過ごしていくうちに、「良い仲間」から「守りたい子」に変わったんだ」



パッと顔を上げて、視線を合わせる。

先輩は…桜井先輩は、とにかく穏やかで。

今までに見たことがないくらいに、優しい笑みを浮かべていた。



「二週間前、「色々考えることがあって、上手くまとまらない」みたいな話をしただろ? アレはずっと諏訪ちゃんのことを考えてて、自分の気持ちをどう伝えようか悩んでてさ。 ていうか、何も伝えずに「良い仲間」のまま過ごす方がいいのかな、なんてことも考えてたんだ」

「……」

「俺が気持ちを伝えたら、諏訪ちゃんとの距離は確実に変わってしまう。 多分、九割がた悪い方向に。 だったらただの先輩としてそばに居た方が幸せかもしれないな。 って思った。 そう思ったんだけど、やっぱり気持ちを抑えることが出来なくて……でも言うのが怖くて、不安で、頭の中がグチャグチャになって……。 本当にあの時は、どうすればいいかわからなかったんだ」



先輩の言葉が……ゆっくりと、繋がっていく。


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