心霊現象 研究同好会


【 桜井 健吾side 】


………

……




諏訪ちゃんと別れたあと、ダッシュで神代の家に向かった。

玄関が開いててよかった。

諏訪ちゃんに情けない姿を晒す前に入れてよかった。


だってもう、色々限界だったから。



「……ハァ……」



中に入ってすぐ、ゆっくりと息を吐きながら その場にしゃがみ込む。

というか、座り込む。


……諏訪ちゃんに言われるだろう「答え」は、なんとなくわかってた。

それでも知りたくて、知りたくて。

どんな「答え」でも全部ちゃんと受け止めるつもりだったし、その上で笑おうって決めていた。


俺は、ちゃんと笑えていただろうか?

違和感なく、いつもと変わらない俺で居られただろうか?

……そうだったらいいな。

ちゃんと「良い先輩」として笑えてたらいいな……。






「……桜井先輩?」



ふと、廊下の向こうから声がした。

その声は、凄く心配しているみたいだ。



「大丈夫…ですか……?」

「ううん、全然。 諏訪ちゃんに振られたよ。 これから先は今まで通り「良い先輩」「良い仲間」として過ごしていく。 そう決めた」

「……そっか」



俺のそばに来た神代は、上がり(かまち)のところに腰を下ろした。

神代に隠したって意味はない。

それがわかってるから、静かに言葉を繋げていく。



「諏訪ちゃんはさ、「一緒に過ごす時間が好き」って言ってくれたんだ。 一緒に笑い合ってる時間を「幸せ」だって言ってくれたんだよ。 だからもう、それで十分かなって。 だって俺も一緒の時間が好きで、幸せだから」



だから、これでいい。

と自分に言い聞かせながら、また息を吐く。


< 282 / 283 >

この作品をシェア

pagetop