心霊現象 研究同好会
……ここの人たちは、温かい。
その空間に居られることが嬉しいし、一緒に居ることを許されてるのが幸せだ。
週末に出かけるのが楽しみだな。 と、そう思った時……──、
「……あっ……」
──……ふと、視界の端を“何か”が通り過ぎていき……私はそれを、ついつい目で追ってしまった。
見えたのは、スーツを着た三十代から四十代くらいの男性の幽霊だ。
その幽霊と うっかり目を合わせてしまったことにより、向こうも私が「見える人間」だと気がついたらしい。
さっきまで少し離れたところに居たのに、スーッと音もなく移動し、あっという間に距離を詰めてきた。
とっくに目は逸らしたあとなのに、メチャクチャ視線を感じてる……。
……そのへんによく居る浮遊霊だったのが幸いだった。
このまま放っておけば、そのうち離れていってくれる…はず。
大丈夫。
普通にしていれば、大丈夫……。
「ん? 諏訪ちゃんどうした? なんか顔色悪くない?」
「……いえっ、全然何もないですっ。 大丈夫ですっ」
先輩たちに悟られたくない。
変な奴だと思われたくない。
背中に冷や汗が流れるけれど、なんでもない顔で笑う。
そうやって、今を乗り切るしかない……。
「諏訪さん。 ソレ、俺が引き受けよっか?」
「……え?」
隣に座ってる神代先輩が、「ソレ」と言って私の横を指差した。
その場所って……幽霊が居るところ……。
「ここのメンバーの前では、しんどい時はしんどいって言って大丈夫だよ」
先輩が、私の肩をポンと叩く。
その次の瞬間に、少しだけ体が軽くなった…ような気がした。
ハッと気づくと、さっきまで私を見てたはずの幽霊が……今は神代先輩を凝視してるみたい。
幽霊の興味が…私から神代先輩へと移ってる。