心霊現象 研究同好会


……ここの人たちは、温かい。

その空間に居られることが嬉しいし、一緒に居ることを許されてるのが幸せだ。


週末に出かけるのが楽しみだな。 と、そう思った時……──、



「……あっ……」



──……ふと、視界の端を“何か”が通り過ぎていき……私はそれを、ついつい目で追ってしまった。


見えたのは、スーツを着た三十代から四十代くらいの男性の幽霊だ。

その幽霊と うっかり目を合わせてしまったことにより、向こうも私が「見える人間」だと気がついたらしい。

さっきまで少し離れたところに居たのに、スーッと音もなく移動し、あっという間に距離を詰めてきた。

とっくに目は逸らしたあとなのに、メチャクチャ視線を感じてる……。


……そのへんによく居る浮遊霊だったのが幸いだった。

このまま放っておけば、そのうち離れていってくれる…はず。

大丈夫。

普通にしていれば、大丈夫……。



「ん? 諏訪ちゃんどうした? なんか顔色悪くない?」

「……いえっ、全然何もないですっ。 大丈夫ですっ」



先輩たちに悟られたくない。

変な奴だと思われたくない。


背中に冷や汗が流れるけれど、なんでもない顔で笑う。

そうやって、今を乗り切るしかない……。






「諏訪さん。 ソレ、俺が引き受けよっか?」

「……え?」



隣に座ってる神代先輩が、「ソレ」と言って私の横を指差した。

その場所って……幽霊が居るところ……。



「ここのメンバーの前では、しんどい時はしんどいって言って大丈夫だよ」



先輩が、私の肩をポンと叩く。

その次の瞬間に、少しだけ体が軽くなった…ような気がした。

ハッと気づくと、さっきまで私を見てたはずの幽霊が……今は神代先輩を凝視してるみたい。

幽霊の興味が…私から神代先輩へと移ってる。


< 9 / 283 >

この作品をシェア

pagetop