無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
そうだった。明日は前々から約束してあったお茶会があったわ。はあ、今日の予定さえなければ、心構えができたのに。本当は行きたくないけど。でも令嬢として最低限の社交をした方が、面倒な事にならないですむ。子供の頃はそれで苦労したもの。昔は本当に……いろいろ……言われて……ぐう……
いつの間にか舞台も終わったようで、感動で目を赤くしたグレッグが私の肩を揺さぶり起こしてくれた。
「あいかわらず熟睡すると、白目になるんだな。他の人には見せないように」
私の汚い寝顔を軽蔑するわけでもなく、むしろ小動物を見るような目で私を見ている。こういうところがグレッグの良いところだわ。うんうん、と思っていると、グレッグの悪いところが出てきた。
「しかしデート中に寝てしまうのは寂しかった。だからカフェの後、本屋にも付き合ってくれ」
「それ絶対にこの舞台が良かったから、原作の本も買いたくなっただけでは?」
やけにキリッとした顔をしていたけど、私が指摘すると照れ笑いをしている。まあ、しょうがない。グレッグにはさんざんお世話になっているから、恩を売っておきましょう。私達は完璧な令嬢とその婚約者として、ウフフと笑いあいながら劇場をあとにした。