無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
あら、気づきましたか。グレッグは少女趣味がまわりに知られるのをすごく嫌う。だからこそこういった場所で意地悪をするのは、ちょっと楽しい。私はケーキを半分に分け、グレッグの口元に持っていく。
「ちょっ! 一口が大きいぞ。もっと味を堪能させてくれ! 飲み込まなきゃいけなくなる」
「文句が多いですわね。はいどうぞ」
「今度は小さすぎるぞ」
「ふふ」
カフェを堪能したら本屋だ。グレッグはいったい何冊買う気だろうか。高価なものなのに惜しげもなくお金を払い、さも私に買ってあげたというフリをしている。しかしそんな上機嫌なグレッグの一番苦手なものが、帰りの馬車で襲ってきた。雷だ。グレッグは子供の頃から雷が大嫌いで、いつも私が抱きしめなぐさめていた。