無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
「……グレッグは、よく眠れたの?」
「ああ! ぐっすり眠れた! 家のベッドより眠れたよ! ははは!」
なぜかしら。妙に元気があるグレッグにイライラしてくる。あなたはいつもより寝れて元気回復しているようですけど、私は別に眠ってないから機嫌も悪い。
「それは良かったわね。じゃあまた」
ニコリと笑って家の中に入ろうとすると、パシッと手をつかまれる。驚いて振り向くと寂しそうな顔をしたグレッグがこちらを見ていた。
「その笑い方やめてくれ」
「え……?」
「笑いたくないなら笑わないでいい。俺に作り笑いはやめてほしい」
「わ、わかりました」
(本当に私のことよく見てるのね)
「あと、10日後に夜会があるだろう? その日は絶対に2人で行きたいんだ。いいかい?」
「……いいわ」
「そうか! ドレスも贈るし、当日は迎えに行くから」
そう言うとグレッグは晴れやかな笑顔で帰っていく。機嫌よく歩いていく彼の後ろ姿を見送ると、不思議とさっきまでのささくれた心が和らいでいるのを感じた。