無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
「まあ! 今夜もレイラ様とグレッグ様の美しさは際立っているわ」
「ドレスもマダムロゼのものよ。センスが良いわ」
「グレッグ様は騎士団で鍛えてるだけあって、凛々しくていらっしゃるわね」
「本当にお2人は完璧ですわ」
今夜の夜会も私達が顔を出したとたん、噂話が耳に入ってくる。美しい宮廷音楽に色とりどりのドレス。令嬢なら心ときめかせて過ごすはずなのに、私はさっきから上の空だ。今日は蒸すわね。早く家に帰りたい。そんな私の気持ちなどおかまいなしに、私達2人と話そうとやってくる人の列は絶えない。
「レイラ、次はハワード侯爵夫人だ。さっき教えた本の題名を覚えているか?」
「……?」
「乙女の誓いだ。夫人お抱えの作家が書いている作品だから、話題に出すように」
「わかりましたわ」
(乙女の誓い、乙女の誓い、乙女の…… よし! 覚えたわ!)