無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
「レイラ様は、嘘つき令嬢ですね」
「え?」
「刺繍もできない、ドレスも選べない、舞台も寝ていて本当は見ていないでしょう? 今日お茶会で話したことはぜーんぶ嘘!」
いったい何が目の前で起こっているのか、さっぱりわからない。シャルロット様の表情は、先ほどと全く変わらない。話す言葉が聞こえなければ、私達は楽しく談笑しているように見えるだろう。
実際に前を歩いていたカレン様とケイティ様はこちらを振り返った後に、そのまま館の方に歩いていってしまった。彼女の変わりぶりに驚き、差し出した手を引っ込めようとするも、反対にギュッと掴まれてしまう。
「でも私は本物です。刺繍も、お菓子づくりも上手で、そのうえ可憐で美しい。あなたの様な怠惰なニセモノじゃないの」
「……な、なにが言いたいの?」
ようやく絞り出した言葉も無かったかのように無視され、シャルロット様は嬉しそうに話を続ける。私は自分の耳に響くほど、胸がバクバクと鳴るのを聞いていた。