無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
(ここまで騒がしければ、抜け出して馬車を呼んでも気づかれないわね)
私は靴音を立てないよう、気配を消してそうっと歩き出す。しかし1歩踏み出した瞬間、目の前にグレッグが飛び出してきた。ぜえぜえと息を荒げ、こちらを睨むように見ている。
「どうして俺を置いて帰ろうとするんだ?」
「だって! それは……!」
そういえばシャルロット様に秘密を知られた事を、まだグレッグに伝えてなかった。でも帰ろうとしたのは、それだけが理由じゃない。どこから説明すればいいのかわからず黙っていると、グレッグは涙目になって責めるように見つめていた。
「好きな男のところに行くのか?」
「えっ!? なにを言ってるの?」
(自分はあんな事しておいて、あんまりじゃない?)