無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
「好きな女性ができたのは、あなたでしょう! さっきだってシャルロット様と一緒にいて、それにこの前、抱き合ってたじゃないの! 私、見ました!」
普段ほとんど感情が大きく動かない私だけど、この時ばかりはグレッグをビシっと指差し、大声で責め立てた。さぞや慌てふためくだろうと思っていたのに、目の前のグレッグはキョトンとした顔で首をかしげている。
「……? そんなことしてないぞ! たしかに彼女と騎士団で会ったが、君のことで相談があると呼び出されたからだ! 会ったのはあの時が初めてだしな。しかもその時俺の胸に寄りかかってきたから、首根っこをつかんで引き剥がしたけど、抱き合っていたとはあれの事か?」
グレッグはその時を再現するように、自分の服の襟をつまみ上げて説明している。……そういえば抱き合っているところまでは見なかったわ。グレッグの手が背中にまわったからてっきりそのまま……と思ったけど、実際はシャルロット様の襟をつかんで引き剥がしたってこと?