無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
「あの女、徹底的に調べないと……いや、これも今はどうでもいい!」
グレッグがガシッと私の肩をつかんで、じっと私の目を見つめる。もう怒っている様子は無いけど、さっきより泣きそうな顔になっているのは、どうしてだろう?
「……本当に好きな男は、できていない?」
「できてません」
そう私が即答すると、グレッグは大きく息を吐き、首をガクリと前に倒した。小さく「やっぱり嘘か。良かった」と何度も呟いている。もう! 1人で理解しないで! 私にはまだ状況が見えない。私は手を腰に置いて怒ってる雰囲気を出し、グレッグを問いただした。
「あなたこそ、今日の態度はなんですか?」
「す、すまない。手紙を何通送っても返事がないから、君に愛想を尽かされたと思って。それに今日は……!」
「今日は?」
小首をかしげグレッグの話の続きを待つと、彼は耳まで真っ赤にしてうつむいている。さっき国王陛下の前で堂々としていた人と同じとは、とうてい思えない。それでも意を決したように、グレッグは顔を上げ私を見つめる。その熱のこもった青い瞳には、さっきまであった迷いはもう無かった。
「今日は俺にとって、夢が叶う日なんだ。武術会で優勝し表彰されるのも、その夢のひとつだ」
グレッグは緊張した面持ちで、私の前に片膝をついた。