無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
「レイラ! 行こうか!」
グレッグの声で振り向くと、私は思わず時が止まったように立ちつくす。青空の下で陽の光を背にしたグレッグは、黄金の髪をなびかせ手を差し出していた。白いタキシードを着ているせいか、体全体が光の粒でキラキラと輝いているように見える。
(まるで少女小説のヒーローみたいだわ……)
招待客もグレッグの姿に心を奪われたように、見入っていた。その様子を見ていると、今までは感じたことがないモヤモヤした気持ちが心の奥に生まれる。
(……なるほど、これが嫉妬なのね。……でも、あなたの本当の姿を知っているのは私だけだわ)
私がグレッグを手招きして呼ぶと、彼は飼い主に呼ばれた大型犬のように笑顔で駆けよってきた。ニコニコと私への愛情を隠そうとしない表情に、胸が高鳴る。
(なんだか私も、浮かれちゃってるみたいね)
私は教会の階段を一段上がり、差し出されたグレッグの手をつかんだ。そのままゆっくりと顔を近づけると、彼の表情が驚きに変わる。顔はみるみる赤くなり、私を見つめる瞳の奥には熱がこもり始めた。
「愛してるわ。グレッグ」
私はまわりがざわめくのを感じながら、私だけの愛しい乙女な騎士にキスをした。