無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない


 でも俺は違う。外では完璧な淑女でも、俺の前だけでは素のレイラでいてくれる。「帰ってもいい」と許した時のあの可愛い笑顔。俺の前でだけ本当の笑顔を見せてくれる。それがなによりのご褒美だ。この特別感は誰にも味わわせたくない。


「う〜ん……乙女の……」


 レイラの眉間にしわが寄る。寝言でまで覚えようとするなんて、そうとう疲れたんだな。早く帰って良かった。俺にとってラクなことだが、彼女にとって興味のないものを覚えるのは一苦労だ。特に婚約前は自力で令嬢らしくしないといけなかったので、出会った時にはひどく暗い顔をしていた。


(まあ、あの頃の俺も、男らしくしないといけない毎日で、暗い顔だったと思うが……)


 子供の頃は友人達に少女趣味をからかわれていた。でもレイラはそのままの俺を受け入れて、しかもどこか面白がっている。初めて会った時も馬鹿にすることなく、俺が人形で遊んでいるのを不思議そうに見ていた。

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