無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

「こーしょーせーりつね」
「……うん!」


 こうして俺達は初めて会った日に、婚約することになった。最初はいきなりの展開に驚き戸惑っていた両家だったが、会うたびに仲良くなる俺達を見て、すぐに婚約の手続きをしてくれた。


 こんなふうにお互いの利害の一致で始まった婚約だったが、俺はいつもレイラに救われた。女の子の趣味を楽しむこともそうだが、16歳で彼女に言われた言葉で俺の人生はガラリと変わる。


 当時の俺は親の勧めで騎士団に入団したばかりだった。自分が考えていた以上に騎士としての才能はあったが、毎日の地道な訓練にはやりがいを感じられない日々を送っていた。


「それはそうでしょう。だって今は戦争もないし、害獣だって出ない平和な日々ですもの」


 俺が呟いた「騎士団の仕事は訓練ばかりでつまらない」という不満に、レイラは優雅にお茶を飲みながらそう答える。
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