無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

 レイラの家の領地には国境に面している場所がある。なにかあったら彼女の家族は領地を守るため戦うだろうし、領主一族は殺される危険もある。


「でもそれは騎士の方が、日々の訓練に気を抜かず鍛錬して強さを保っているからでしょう? 弱い騎士団だとわかっていたら、いつ攻め込まれるかわかりません。だからグレッグも国や国民を守り続けるために、強くなってみてはどう?」


 小さい声で「私が惰眠をむさぼるためにも……」と聞こえたが、まあいい。さっきまでくすぶっていた不満が、彼女の言葉であっという間に消え去り、日々の訓練へのやる気がふつふつと湧いてきている。


(そうか、無駄のように思えた訓練も、国の防衛や治安に役立っているのだな。気づかなかった……)


「素晴らしい考えだ! レイラは本当に素敵な令嬢だな!」
「今さらなんですの……」

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