無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

 俺の突然の褒め言葉に、めずらしくレイラの顔が赤くなる。そのまま照れているのをごまかすように、ぐいぐいと紅茶を飲み始めた。それでも俺がニコニコと彼女を見つめるのをやめないので、フン! と鼻をならしてそっぽを向いてしまった。


「もう! 武術大会で優勝できるほど、鍛えてらっしゃい!」


 レイラが好きだ。レイラのこの考え方に俺は何度も救われている。俺の頑張りでレイラが惰眠をむさぼれるならこんな幸せなことはない。それからというもの、俺は日々の訓練に身が入るようになり、いつしか武術大会での優勝が目標になった。


(レイラのおかげで優勝もできた。あとは次の夜会で表彰され、そのままプロポーズだ!)


 しかしレイラをクライトン邸に送りご機嫌で自宅に帰ると、母親が腕を組んで何か言いたげに待っていた。
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