無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない
――それなのに、帰る時に雷が鳴るなんて!
俺の一番怖いものがレイラとのデート中に襲ってくるとは、予想していなかった。まだ遠くで鳴っているみたいだが、俺はどうしてもこの音を聞くと勝手に体が震えてしまう。見かねたレイラが俺を呼び寄せてくれ、俺も何の気なしに隣に座る。
……しまった! これはダメだ! レイラも子供の頃のように慰めているだけなのだろうが、体は大人だ。昔とは違う。自分の顔に彼女の胸が当たっているのがわかり、思わず息を止めた。
(わざとなんだろうか。これは騎士として忍耐を鍛えられているのか?)
レイラの胸元からふわりと薔薇の香りがする。あ~これは確かサイラス社の新作石鹸だな、なんて現実逃避でもしなければ理性がキレそうだ。俺はすかさず寝たふりをして過ごすことを決めた。それなのに。
レイラが自分のふくよかな胸に、俺の頭をぐいっと押し付けた。ふわんと柔らかい感触が頭に当たるのを感じる。
「……!」