意地悪王子様のホワイトデー大作戦
「どしたの?千歳」

僕を見上げた実花子が、首を傾げている。

(マジで、こんな可愛い顔、急に僕にむけるとか、反則)

僕は慌てて、ちょうど目の前を通り過ぎていく、白、黄、茶のコントラストの魚を咄嗟に指差した。

「あ……いや、実花子に似てるなって」

「え?どれよ?」

実花子は、僕の指先を目で辿ると、すぐに眉間に皺を寄せた。

「ちょっと、千歳っ。なんで私が、ツノダシに似てんのよっ」

展示されている魚の名前を電光パネルで、確認すると実花子が、手を繋いだまま、僕を肘で突いた。

「いてて……ぷっ……本当だ、実花子そっくり」

「千歳が言ったんでしょっ!どうせ、あのツノダシみたいに、いっつもピリピリしてるわよっ、可愛くないわよっ」

(どこが。可愛いとこばっかじゃん)

僕は、あたりに人がいないことを確認してから、実花子の額にキスを落とした。

「ち、千歳……」

「実花子可愛い」

今日くらいいだろう。実花子にありのままを口に出したくなる。なんなら、今日のベッドの上の徹夜も確定だ。

「な……ちょ……調子狂うわね……」

「今日は、ホワイトデーだから、僕、とことん実花子を甘やかしたいんだよね」

「え……そうなの?でも、私、バレンタインデーって言っても、千歳にチョコチップクッキーしかあげてないじゃない」

「もう一個もらった」

ニヤリと笑った僕の表情をみて、実花子は、すぐに顔を紅潮させる。

「わかる?思い出してくれた?言おうか?僕が、バレンタインデーの夜、ベッドの上で、何したか?」

「いいっ、思い出したっ」
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