意地悪王子様のホワイトデー大作戦
『本日は、ご観覧くださり、誠にありがとうございましたー』

飼育員達とイルカ達のお辞儀に、会場からは、拍手喝采が巻き起こる。

実花子が、パチパチと拍手を送りながら、スマホで写真を数枚撮った。

「撮れた?」

実花子にくっつきたかった僕は、ここぞとばかりに、実花子の頬に鼻先がくっつきそうな距離まで近づく。

「と、撮れた……」

実花子が、僕の鼻先からほんの少しだけ距離をとった。

夕焼けはあっという間に沈んで、ほんのりと藍色の夜が顔を出し始める。周りにいた客達が会場を出て行ったと共に、会場が虹色にライトアップされた。

「わ。びっくりした。綺麗ーっ、夜になったらライトアップされるんだ。みて、千歳、水槽が虹色になった」

「本当だね」

僕は、実花子のスマホに写った写真を指先した。

「ね、僕らも撮ろ?」

「えっと、うん……」

実花子が、頬を染める。実花子が、外でベタベタしたくないのも、外でくっつくことすら苦手なのも知ってる。

基本、実花子が素直なのは、ベッドの上だけだ。

でも隣のお姫様は、いつだって僕のことを想ってくれていて、心も体も僕に縛られてくれてることを、僕はちゃんと分かっている。
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