意地悪王子様のホワイトデー大作戦
「じゃあ撮るから」

こちらにスマホを向けて、僕に精一杯顔を近づけた実花子が、シャッターを押す瞬間に、僕は、実花子のほっぺたに、唇を落とした。

「っ……千歳っ」

案の定、実花子が、すぐに切長の瞳をこれでもかと細めて、僕を睨む。

「何?予想してたでしょ?」

「な……そんな事ないっ」

「あ、せっかちだな、もうベッドの上での僕の意地悪でも想像してたかな?」

「もう、ばか!そろそろお腹減ったからっ、行くわよっ」

勢いよく立ち上がった実花子の掌を僕は、強く握りしめた。

「……え?千歳?ちょ……何よ?」

僕は、立ち上がると、実花子をぎゅっと抱きしめた。

(さてと……さすがに緊張してきたな)

「ちょっと離して……誰か来たら……」

「誰も来ないよ」

「え?」

「この会場、夜だけ、僕貸し切ったから」

実花子が、僕の胸を押し離すと、驚いた顔をして見上げた。

「ど、して……?」

「どうしてだろうね」

僕は、ポケットにちゃんとソレが入っている事を確認する。

「ね、実花子。僕のコト好き?」

「えと、私……」

真面目な顔の僕に、実花子が、視線を泳がせながらも、僕を見つめ返すと、小さな唇をキュッと結んだ。
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