独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「本当に申し訳ございませんでした。お手荷物は壊れていませんか?」


女性が再びの謝罪とともに、紙袋を手渡してくれた。


「本なので、大丈夫ですよ」


「よかった……」


少しだけ表情を緩めた女性は、大きな丸い二重の目が印象的な整った面差しをしていた。

母親譲りの少し釣り目がちの二重の私からすると、とても羨ましい。


「あの、あなたのほうは……」


地面に投げ出された女性の荷物が気になり尋ねると、彼女はゆっくりと首を横に振った。


「気にしないでください。むしろ壊れてほしいくらいなんです」


そう言って、女性は拾い上げた自身の紙袋をやや乱暴に手に提げた。


「え……?」


「申し訳ないのですが、急いでいるので失礼します」


ぶつかってごめんなさい、と再度丁寧に謝罪し女性は足早に去っていった。

一瞬首を傾げたが、私も自身の勤務先へと足を進めた。
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