独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
お互いの想いを伝えあい、赤ちゃんも授かり、私たちの距離はとても近づいたと思う。

瑛さんは私への感情を言葉で表してくれるようにもなった。

最初の頃のとっつきにくいイメージはずいぶん払拭されたが、元々彼の口数は多くない。

そもそも忙しい人なので、ともに過ごせる時間は限られている。

さらに言うなら、最近は疲れを滲ませている日も多く、気楽に雑談も仕掛けにくい。



『なんで知らないのよ。普通に尋ねたらいいじゃない』



『そうなんだけど……』



『まさか、まだ結婚当初に言われたことを気にしてるの?』



芙美の真っ直ぐな質問がグサリと胸に刺さり、以前の彼の言葉が思い浮かぶ。

 

『契約結婚だと思ってくれて構わない。俺がお前を愛することはないだろうが、不貞を働くつもりはない』



あの頃と今は状況が違うのに、心の奥底で小さな不安の芽が燻っている。



私へ向けてくれた“好き”は私と同じ感情の、重さの“好き”なの? 



家族としての、親愛の情ではなく?



恋人として、求めてくれている?



面倒くさい悩みだと自覚はしている。


泣きたくなるくらい幸せなのに、近づけば近づくほど、好きになればなるほど、欲張りになって不安になっていく。

数々の迷いや疑問を尋ねたいのに、踏み込んで嫌われるのが怖い。

優しい視線が、以前のような冷たいものになるのがつらい。

だからこそ無理やり感情に蓋をしている。

想いを返される喜びを知ってしまった今、彼を失うのは耐えられない。


……私はとても臆病になってしまった。
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