独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
『なんとなく悩みの検討はつくけど、どちらかが我慢し続けていたら、いつか破綻するわよ』



芙美の冷静な声が頭に響く。



『彩萌が幸せならいいけど、無理しすぎないようにね。心の中なんて誰もわからないんだから。出会って間もないんだし、積極的に話さなくちゃ』



『だけど……どこまで話していいか、踏み込んでいいのか迷うの』



『結婚までしてなに言ってるのよ。一度お互いの考えを過去の出来事も含めてきちんと話し合うべきじゃない?』



『……でも、今の生活に不満があるとかじゃないのよ』



健診にもできるだけ付き添ってくれて、家事なども負担がかからないよう配慮してくれる。

気遣われ、大事にしてもらっているのはよくわかっている。


『夫婦のことに口を出すべきじゃないんだろうけど……そういえば、しきたりのレッスンはどう? 順調なの?』



芙美には富田さんについて以前、簡単に説明していた。



『丁寧に教えてもらっているわ。難しい話ばかりじゃなく雑談も織り交ぜて説明してくださるからわかりやすいの』



『よかったわね、いつもふたりでレッスンしてるの? 副社長が嫌がらない?』



『レッスンはお義母様が同席されているし、なにも言われていないわ。場所はホテルのティーサロンの個室だったんだけど、最近、梁瀬家に伝わる品々を見せてくださることになって本家に伺っているの』



実際この件に関しては、従兄弟に後日礼を兼ねた連絡をすると言われたくらいだった。
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