独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
時間に余裕をもって家を出る。

瑛さんを気にしながら過ごすのは嫌で、スマートフォンの電源を切った。

普段の外出もできるだけタクシーや送迎車を利用するように何度も言われているが、運動不足になるのはよくないと適度に歩くようにしている。

今日は電車を利用するつもりだ。

お腹の赤ちゃんは順調に育ち、健診で少しずつ成長した姿を目にするたびホッとする。

同時に愛しさがこみ上げて、早く会いたいと願う。

妊娠してから無意識にお腹を撫でる癖がついてしまった。


食事会の場所は新宿にあるフレンチレストランの店だ。

出席の返答後に検索してみたところ、歴史ある、とても有名なお店だと知り驚いた。

もちろん足を運ぶのは初めてだ。

ケーキなどのデザート類がとくに人気があり、それを目当てに通う客も多いそうだ。


電車の乗り継ぎもスムーズで無事に到着し、店内に入った。

大きめの入口とオシャレなペンダントライトが目を引く。

店員に食事会の予約の旨を告げると、怪訝そうな表情をされた。



「時芝様の食事会でしたら午前十一時半からのご予約で、少し前に皆様お引き取りされましたが……」



「……え? でも、確かに二時からと……」



「申し訳ありません。承りました時芝様のご予約は、一件のみです」



困った表情を浮かべる男性の店員の声が、耳に響く。
< 122 / 174 >

この作品をシェア

pagetop