独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「そんな……なぜ、教えていただけなかったんですか……?」



混乱した気持ちで問いかけると、彼女はすうっと冷たく目を細めた。



「教えるもなにも、予定の確認を前日までになさるのは常識じゃありません? 大事な用件になればなるほどそうです。梁瀬に連なる私たちは、幼い頃から教えられてきましたし、実行しています」



「え……」



「自分の身を守る術、相手への気遣いですわ。私たちにとって当たり前の習慣です。何事も相手任せで、ただ参加するだけなんて恥ずかしい真似、誰もいたしません」



刺々しい口調から、私を友好的には決して見ていないと悟った。

彼女の言い分には一理ある。

確認を怠ったのは私だ。



「手土産が無駄になられたら申し訳ないのですけど……」



しおらしい口調とは裏腹に、キツイ眼差しは変わらない。



「まさか、皆さまへのお土産すらお持ちじゃないのかしら?」



心底驚いたと言わんばかりに、バッグひとつしか手にしていない私を不躾に眺める。



「まあ……申し訳ありませんわ。あなたの常識と私たちの常識がこうもずれているとは思いもしなくて。一から十までお教えしないとダメでしたのねえ」



言葉の端々と態度に滲む悪意に、気分が塞ぐ。



日菜子さんは、瑛さんに私が確認しないとわかっていたのだろうか? 



それほどまでに疎ましいの? 



嫌がらせに、ため息を吐きたくなる。
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