独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「でも、お体になにかあったら……」



私の妊娠は、まだ親族内でも限られた人にしか知らされていないはずだが、朝霞さんはきっと瑛さんから聞いているのだろう。


視線が私の腹部に向けられていた。



「だ、大丈夫です。少し暑かっただけです」



無理やりな言い訳で必死に取り繕う。

彼の最愛の人に助けられるなんて、情けなさすぎる。

ふたりが親密に連絡を取り合っている姿も見たくない。

これ以上傷つきたくない。



「……でしたらせめて、車の中で休んでください。その状態の新保さんをひとりで帰したら瑛に怒られます」



「いえ、まさか……」



私に関心なんて、もうないはずだ。



「里帆さんが彩萌さんを構う必要はありませんわ!」



辛抱堪り兼ねたのか、日菜子さんが息まく。



「あなたに言われる筋合いはありません。なんにでも口を挟む下品な振る舞いはお母様によく似てらっしゃいますね」



辛辣に言い返す朝霞さんの目は、厳しい。



「忠告しておきますが、瑛に無駄な揺さぶりは効きませんよ。瑛は自分の宝物を傷つけられたら、容赦なくやり返しますから」



「は……?」



わけがわからないといった表情を浮かべる日菜子さんを尻目に、朝霞さんは私を支えながら促す。



「お店の裏手に車を停めているので、少しだけ我慢していただけますか? 歩くのがつらいならこちらで待っていただければ……」



提案に、首を横にふる。

恋敵に助けられるのも、ともにいるのも、おかしい気がするがここにはいたくなかった。

現状を知った今、瑛さんのマンションにはもう戻れないし、戻りたくない。

二度目とはいえほぼ初対面の状況で、警戒心がなさすぎるかもしれないが、今の私は冷静に状況判断ができそうになかった。
< 128 / 174 >

この作品をシェア

pagetop