独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
『彩萌はいちいち、相手の反応を気にしすぎよ。自分の思うように行動してぶつかればいいのに。喧嘩が嫌なの?』



別れを報告した直後、親友に言われた言葉は今も記憶に残っている。

喧嘩が、ではなく感情的にぶつかるのが苦手なので、最初から一歩引いてしまう。

想いをむき出しにしてまで手に入れたいと願う恋心なんて、わからない。

自分の過去の恋愛を思い出し、ため息を吐く。

買い出しなので、デニムパンツにざっくりした白のサマーニットという楽な装いを選ぶ。

もちろん指輪もきちんとバッグに入れて、家を出た。

マンションのエントランスを通り抜けたとき、背後から声をかけられた。



新保(にいほ)彩萌さんですか?」



「は……い」



反射的に返事をし振り返ると、驚くほど整った面差しの男性が立っていた。

意思の強そうな眉と左右対称の綺麗な切れ長の二重の目、高い鼻梁が目を引く。

長めの艶やかな黒い前髪が小さな顔にかかり、薄い唇から白い歯がのぞいている。

しかも長身で驚くほど手足が長い。

身長百六十センチの私より頭ひとつ分以上高いこの人は、きっと百八十センチを超えているだろう。



「申し訳ないが、今から一緒に来ていただきたい」



「え?」



言葉遣いは丁寧だが、断るのは許さないと言わんばかりの強い視線にたじろぐ。



「あの、失礼ですがどなたかとお間違えでは?」
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