独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「紛らわしい言い方をしてごめんなさい。あれは瑛と新保さんが結婚したのが羨ましいという意味ではなくて、好きな人と結婚できたのが羨ましいって意味なの」



「え……?」



思いがけない話に、瞬きを繰り返す。



「新保さん……少し長い昔話になるんだけど聞いてくれる? 瑛は必要最低限しか自分のことも梁瀬家の話もしていないみたいだから……散々迷惑をかけた私に言われたくないかもしれないけれど、きちんと理解してほしいの」



真剣な様子に、私も居住まいを正してうなずく。



「教えて、ください」



「瑛と私は幼馴染だけど、兄妹みたいに育ったのよ。年が近いし、当たり前のように婚約者になってね。子どもの頃はしきたりなんてよくわかっていなかったけど、成長するにつれて梁瀬の存在が瑛と私には息苦しくて仕方なかった」



どこか遠い目をした朝霞さんが、思い出を語る。



「優秀なうえ美麗な容姿の瑛は、跡継ぎとしてものすごく期待されていたわ。完璧で当たり前だと分家の人間は考えていてね。瑛がどれだけ努力して、なにを考えているのかすら理解せずに、勝手な将来像を押しつけていたのよ」



なんとなく、出会った当初の瑛さんの姿が脳裏に浮かんだ。

何物も寄せつけない、冷たい目が苦手だった。
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