独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「人に甘えるのも極端に苦手だし……というか、甘え方を知らないんじゃないかしら。そもそも我がままを口にしないから」



じゃあ……眠るとき私を抱きしめて離さないのは? 



もしかして……甘えてくれていた? 



「新保さんには、なにか思い当たる節があるんじゃない?」



鋭い指摘に、鼓動が速くなる。



「でも……私は瑛さんの力になれません。家柄も人脈もないですし、作法だって身についていません。私では……ダメなんです」



恋敵に泣き言なんて言いたくないけれど、私ではお荷物にしかならない。



「瑛がそう言ったの?」



朝霞さんが真剣な眼差しを向ける。



「新保さんはそれでいいの? 瑛を、この結婚を、あきらめるの?」



あきらめる?



瑛さんを?



この恋を?



「新保さんはどうしたいの? ……散々迷惑をかけたお詫びに、新保さんの望みを叶えるわ」



私の望み……?



そんなの、ひとつしかない。



グッと唇を噛みしめると、大好きな人の声が聞こえた気がした。



『噛むなよ。俺の大切な妻の体を傷つけないでほしい』



どんなときも私の体を、心を、私以上に案じてくれていた。

言葉や態度が素っ気なくとも、本質はとても優しくて思いやり深いと知っていた。



「しきたりや確執を嫌う瑛が、あなたに家柄や人脈を望むと本気で思う?」



朝霞さんの諭すような声が、心の奥にストンと落ちて響いた。
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