独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「お待たせしてごめんなさい」



戻った朝霞さんが運転席に腰を下ろす。

そして私の体調をもう一度確認して、車を発進させた。



「あの……どうして今日こちらに来られていたんですか?」



今さらながら疑問に思い、尋ねる。



「恩師に挨拶と、改めて渡仏の話をしてきたの」



どうやら先ほどまで訪れていた店は、朝霞さんの恩師が料理長を務めているそうだ。

ちょうど帰り際だったらしい。



「そうだったんですね。助けていただいてありがとうございました」



「ううん、謝るのは私のほうだから」



その後、朗らかな口調で瑛さんの子ども時代の話を教えてくれた。

自宅マンションの前に到着すると、朝霞さんに小さな紙を差し出された。



「余計なお世話かもしれないけれど……私の連絡先。もし悩んだりなにかあったら遠慮なく頼ってね」



どこまでも優しい振る舞いに胸が詰まる。

念のため私も自身の連絡先を口頭で告げ、送ってもらった礼を告げた。

朝霞さんを見送り、自宅マンションを改めて見上げた。

話し込んだせいもあり、今はもう午後六時近くなっている。

瑛さんはきっとまだ帰っていないはずだ。

きちんと話をするという決意は揺らがないのに、なぜか緊張してしまう。

少し気持ちを落ち着けて、話すべき内容を整理しよう。

足取りの重さを無理やりな言い訳で誤魔化して、エントランスに足を踏み入れた。
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