独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
……だが一番の理由は里帆の将来の夢、俺の望む梁瀬家の改革に彼女を利用したのを知られるのが怖かったからだ。

今、彼女を想う気持ちに嘘偽りはないが、元々存在すら知らなかった。

お互いの利益をアピールして協力を求めればいい、という最低な考えしか当初はもっていなかった。


想いが通じた時点できちんと話すべきだった。

だが妊娠という大きな幸せを前に、怖気づいた。

後ろめたさを抱えた心では素直な愛情を伝えきれず、悶々としていた。

感情のコントロールはお手の物で、仕事でも私生活でも怖いものなどなかったはずなのに、彩萌の笑顔が失われ、俺への気持ちが陰るのをなによりも恐れた。

今の幸せを守るのに必死だった。

だから幼馴染の話題は避け、接触しないよう、注意を払っていた。


卑怯でもなんでもいい。

彼女だけは失いたくない。

彩萌は俺の我がままだから。

彼女さえいてくれたらほかにはなにも望まないと、里帆の両親と俺の両親の前で告げた。

お前がなにかを心から欲するのは初めてだな、と父親は苦笑していた。

俺の最初で、恐らく最後の我がままを、彼らはなぜか穏やかな表情で受け入れてくれた。

ただし、彩萌の気持ちを最優先するようにと苦言は呈されたが。
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