独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
『なにを甘えてるのよ。嫌われたくないから努力するんでしょう。気持ちが離れたくないから、言葉と態度で説明してわかりあうんでしょう。瑛はなにもしていないじゃない』



里帆の言葉が鋭い矢となって、心に突き刺さる。



『私たちはエスパーじゃないの。考えや思っていることは、口に出さなくちゃ伝わらないわ。ましてや相手からその機会を奪うなんてありえない』



ガツンと頭を強く拳で殴られた気がした。



『瑛、よく言っていたでしょ。しきたりすべてが不要でも、悪でもない。時代に沿ったものを見極めて精査し、変革していくべきだって。人間関係も似ていると思わない? お互いをよく知って双方の主張を聞いて、話し合って、理解しあう……違う?』



「……ああ。間違えたのは俺だ。彩萌に謝りたい。改めて俺の想いを告げて、噓偽りなく話がしたい」



自然と頭が垂れた。

大事にしたい、傷つけたくない、そう願っていたはずだった。

けれど愛しく想えば想うほど、失うのが怖くなり自分の都合ばかりを押しつけた。



……本当に最低だ。



一番愛する人を自ら手離しているようなものだと、なんでわからなかったのか。


自分の情けなさに腹が立つ。



『そうね』



「ありがとう、里帆。迷惑をかけた」



覚悟が決まった。

絶対に彩萌を捜しだす。

行方が分からない今、不安は尽きないがあきらめない。

止まったままだった足を動かし、周囲を見回す。
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